日本から8200キロのかなた、いや、わずかそれだけの距離のところで戦争が起こっている。内戦や地域紛争ではなく、原子炉を攻撃対象にし、子供を含む民間人に数多くの死傷者を出しているロシアによるウクライナ侵攻は、世界中の多くの国から非難を受ける、まさに戦争だ。
お釈迦様の教えを最も忠実に現代に伝えるという、古い経を集めた『スッタニパータ』という経典がある。その千を超える詩句の中で、わずか10句の「慈しみの経」がお釈迦様の口から述べられる。現在も南方仏教で大切にされているこの経典には、知足の生活、平和の境地などが説かれる。
その中で、「他の識者の非難を受けるような下劣な行いを、決してしてはならない。一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ」と、共生(ともいき)の世界におけるすべての生命の大切さを説き、また「全世界に対して無量の慈しみの意(こころ)を起こすべし。上に、下に、また横に、障害なく恨みなく敵意なき慈しみを行うべし」と、慈しみの大切さも説く。軍事侵攻している当事者にぜひ伝えたい言葉だ。